大阪で...その1

 遠出してきた。大船縄文温泉や大沼公園なんかじゃなく、羽田経由伊丹空港着だからちょっとした旅である。目的は大阪市立大学創造都市研究科藤塚教室ワークショップの講師役で、函館の都市特性や景観問題などを語り、その後学生諸氏からの質問にも答えるというもの。人前で話す様な柄じゃないのは分かってるが、今までそんな恥知らずをしてきたのも事実だ。しかしそれはせいぜいが90分くらいのもので、安請け合いした後でわかった事なのだが、この度は何と持ち時間は3時間だという。途端に不安でうち震えたが、それも後の祭りで、飛び降りる機会をうかがってるうちに伊丹空港に着いてしまった次第だ。
 藤塚教授とは長いおつきあいになる。教授はコミュニテイFM番組「元町倶楽部のじろじろ大学」の熱心なリスナー(当時はインターネット配信があった)にして5度も生出演してもらってもいるが、何と言っても「都市のジェントリフィケーション」が教授のライフワークで函館は格好の研究対象なのだ。もちろん実地を度々訪問してるけれど、こうして都市の一部を研究素材として「取り寄せて」学生に観察させるというのも大学教授のお仕事と理解した。
 ほぼ正午、伊丹空港には教授が出迎えてくれた。京都の老舗生まれの藤塚教授だが相変わらずの品性と柔和な表情に溢れていて、街並みウオッチングを兼ねた酒蔵巡りへと誘ってくれた。"白雪"の小西酒造のビアレストラン長寿蔵が歓迎昼食会の場で、その後"白鶴"や"菊正宗"というビッグネームの資料館を訪問、おかげで六甲の伏流水が民族の魂を磨いてきた伝統銘酒へと変身する様を知る事ができた。
 そんな時間を過ごしつつ我々はやがて大阪都心へと入り込む。大学サテライトは梅田の中心ビル6階にあり、講師控え室も用意されていた。小心店主が些かの不安を吐露すると「皆さんそう仰るけれど、最後は必ず時間が足りなくなりますよ」と事も無げ。綺麗な小箱を手渡しながら「長丁場ですから、時々これでエネルギー補給してください」と仰り、見れば徳島の和三盆菓子で、なんだか桃太郎サンから頂戴するキビダンゴに見えてくる。それにしても社会人にして大学院生という向上心の権化とは一体どんな人々なのか、教室前の店主の足どりは正直重かった。
 話し手にとって熱心な聞き手ほど嬉しいものは無い。そんな聞き手と和三盆のオマジナイのおかげで「時間が足りなくなる」ほどの3時間を終える事が出来た。その後懇親会というありがたい席にご招待され、サテライト至近距離にあるホテル12階に辿り着いたのは殆ど明くる日近かった。"白鶴"純米大吟醸の小瓶をそっと開け、一口啜ってからベッドに潜り込んだ。
画像は大阪第一ホテル12階客室からの梅田界隈夜景
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