大阪で...その2

 大阪2日目だが、午後3時には関空から函館へ戻る身でもある。朝食を早めに済ませば5時間程度の余暇は出来るだろう、しかし店主は大阪に疎くて実のところ西も東もわからない。見どころはおろか大阪の地理すら思い浮かばないのが正直な所。それを救ってくれたのが藤塚先生で、1時の講義まで空堀地区の「長屋再生運動ウオッチング」をご一緒しましょうというお誘いがあった。もちろん店主に異存はない。世界中の都市を訪ね歩き、その個性や課題をつぶさに研究してる藤塚教授の個人指導なわけで、これは大変な幸運と言わねばならない。情報過多時代だが頼りになるのは量ではなく質、こうしたものは信頼出来る人へのお任せが一番だ。
 電柱や建物に張られた住居表示は「中央区...」とある。きっと大阪の中心部なのだろう。だが、どこだって地価の高い中心部は高層化による再開発を進めるわけで、平屋か二階建てが圧倒的に多いこの地区は所謂都心イメージではない、不思議な価値観に支配された都心の異空間だ。アップダウンや丁字路など小路が複雑に行き交い、両側には使い込まれた長屋や歴戦の個宅が隙間なく立ち並んでいる。まことに怪しい地区で店主興味あふれる世界であり、この度のワークショップの内容ともシンクロして直球のストライクだった。そんな地区巡りに必須なのが直感と嗅覚なのだが、教授のそれは「さすが」だった。おまけに純米大吟醸酒が入ってずしりとなった店主バッグを、その間教授はずっと持ち運んでくれてたのである。申し訳なさを忘れて歩き回ったけれど、そのお陰で空堀地区における大阪庶民再生エネルギーの実態観測に浸る事が出来た。アーチストや起業家精神に満ちた人々のアトリエやショップも散在している。英国パブ風に改修された居酒屋があり、突然朱色に塗られた古い祠が姿をみせたり、共同便所があったりと、実にスリリングな一帯だった。
 今も鮮明に思い出すのが瓦屋町1丁目1番地1号の"雑貨店・おおきな木"だ。狭い道幅の露地のその最奥に、我々は既知だったかのように辿り着いた。小さな店の内外に骨董玩具が溢れていて、それはそれで気が引かれるたのだが、そうした多様な展示品の混沌やアバンギャルド性に埋もれて「六ヶ所ムラ」や「ジュゴン」というメッセージが、とても生き生きと語りかけてきたのである。ショッピングセンターやアウトレットモールなどへと集中しながら、しかし人々の興味と好みは深く高く優しく拡散してるのである。"おおきな木"が静かに、しかし心を込めて発信するメッセージを受け止めて帰路についた。
画像は空堀地区でみたウインドーデイスプレイで、タペストリーのイラストと下に置かれた店名を表す木彫キノコとが秀逸だった。
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