2013年11月アーカイブ

末永龍太"牛舎の中の生きもの"展

 末永さんは獣医師だ。札幌生まれの帯広畜産大学出身、ただいま道南八雲町在住の獣医師である。八雲は酪農が主産業の街なので、人間相手の医師よりもある意味獣医の方が果たす役割は切実。自覚症状を伝える術を持たない牛や馬たちを診察し治療するわけで、誠実であろうとすればするほど負う責任は限りなく高まる。牛や馬や鶏たちを、生命とみてるか物質と見てるかが日々問われるのである。
 末永さんのキャンバスは木の板である。そこに焼きごてで様々な動物達を描き込む。ラフな鉛筆下絵を目印にしながらモデルたちの姿態を再現するわけだが、完成した作品を見れば、作者が動物達を自分と同じ生きものと見てるのがよくわかる。そしてここが大事なことだが、骨格や筋肉や毛並みに注ぐ視線が専門家のものと言う事だ。アルタミラ洞窟などの古代画がどんな目的で描かれたか知る事は出来ないが、現代人が動物園あたりで漫然と観察する視点とは大いに異なり,その時代の表現者は"食糧としての狩猟対象動物"を観察して描いてたという事だ。切実な視点で行った観察のその結果なのだ。何度も書いたけど「粗末な作家は作家をまねるが、優れた作家は自然に学ぶ」というあのダヴィンチの言葉がここでも蘇える。
末永龍太のウッドバーニング画「牛舎の中の生きもの」展
会期11月20日から12月1日まで
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末永龍太作 上『牛舎のヤギ」下『放牧地の老いた牛」


厚沢部のメークイン

 厚沢部町まで行ってきた。函館元町のギャラリーからは大野町経由クルマでおよそ一時間半、中山峠の向こう側に降りるとそこが純農村地帯の厚沢部町だ。見回せば折り重なる丘陵地帯に森と畑がほどよい割合で広がり、そんな景色は眺めてるだけで心ゆたかな気分になってくる。このあたりは我が国"メークイン"発祥の地なのだが、実は先日K村ナッチャンが丹誠込めた今年の収穫物をドッサリお届け下さり、今日はその返礼を兼ねての訪問というわけだ。
 メークインは英国生まれ、時のエリザベス1世の肝いりで世界に普及したが、その名も"五月の王女"、姿形から食味にいたるまで優雅上品さこの上ない。男爵芋とジャガイモ界で双璧をなす存在であるが、その男爵芋だって函館郊外七飯町が発祥の地だ。明治期に英国留学した川田龍吉男爵がこの地に導入したものである。男爵と女王、どちらがどうとは言え無いけれど、とにかく由緒正しきジャガイモたちは偽装も詐称もなく、ただただ誠実な農産物として道南圏から世間に出て行くのであります。優れた農産物は工芸品と同じです、優れた素材に優れた技、それに大きな愛情を注いで完成する、と店主のところでは毎年ナッちゃんの育てたメークインを堪能してるのであります。ナッちゃんメークイン食べてみたい人はどうぞご一報ください。gmuraoka@ms6.ncv.ne.jp
 画像は中山峠を越え、国道から脇道に逸れて館という集落に向かうあたりだが、突然大粒の雹に襲われた。
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鴉の塒は...

 騒がしい外の気配に誘われて出てみたら、空一面...というのはオーバーだが、とにかく暮れ行く空を鴉の大群が舞っていた。たぶん函館山を塒として、大門や本町飲食店街の残り飯を目当てに行き来してるに違いない。ここら旧市街地が殷賑を極めてたころならいざ知らず、えさ場も大門や本町と次第に遠くなるばかりで、都心移転を身にしみて実感してるのは彼ら鴉たちのはずだ。本町あたりを縄張りにする集団なら東山あたりに塒を構えたほうが出勤も楽だろうが、今日の様な大群をみれば彼らの帰宅先はすべて函館山であろう。夜空の鴉は画像では読み取りにくいけれど、つまりそれほど沢山の鴉達なのだ。
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よろみむら展

 これまた毎年恒例なのだが「よろみむら収穫祭」が開催中だ。能登半島輪島の郊外、与呂見という山奥の地で、本格的な自給自足生活を数十年にわたって実践中の集団が「よろみむら」である。だが如何に自給自足といえどもマネーと絶縁して暮らす事は不可能、生産物の幾分かを些かの現金に変える必要がある。当ギャラリーはかれこれ10年以上おつきあい頂いてるが、そうした尊い労働の成果物を必要最小限のマネーに交換する役割を担わせて頂いてるのである。
 よろみむら代表の村田和樹さんは禅宗のお坊さんだ。だからといって村人が厳しい戒律に縛られてるわけじゃない、一同そろって行う早朝座禅だけが唯一の決まり事である。「祈りと労働」はどこか厳律シトー修道院に相通じるけれど、時代と真剣に向き合うこうした生き方は軟弱店主には到底ムリ、せめて無農薬有機栽培のよろみ米ご飯に、よろみ梅干のせてじっくり賞味するくらいしか出来ないのが情けないところ。
「よろみむら収穫祭」
会期11月7日から18日まで
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文化の日考

 快晴無風の連休で、黄金色の立ち木を背景に道行く観光客の姿が殊の外多い。店主小雨でテニスは無しと朝寝を楽しんだけれど、すぐに晴れわたり雨後の青空は美しくて何か得した気分になる。そんな快適天気の文化の日だが、聞けばこの日は新憲法の公布された日だそうだ。憲法記念日というのが別にあるけれどそれは施行された日で、新憲法基本理念の「自由で平和な文化国家」を記念するという意味での「文化の日」なのだとか。だが、特別秘密保護法やらオスプレイやらと年々血生臭くなるばかりだし、たかだか40年程度の電気を製造するために10万年もおののき暮らさねばならないそんな仕組みを54基も作ってしまい、一体何が文化の日かと声を大にしたくなる。この日天気晴朗という伝統だけは踏襲したが、しかし心は曇るばかりだ。
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久しぶりに...

 我らの早朝テニス、このところの悪天候のため長期休戦中だった。クレイコートのせいで雨天続きだと田植え前の田んぼ状態で使用不能となり、それがもう半月以上になるのだ。しかし昨朝から再開された。寝ぼけ状態店主にコートから電話指令、足も腕もすっかり萎え衰えた身にラケット一本引きずるように馳せ参じた次第だ。
 周囲の緑もすっかり秋色だ。コート面には枯れ葉が舞落ちている。桜の花びらが舞ってたころもあったというのに季節の移ろいの確かさにあらためて思いが至る。老荘戦士たちの戦いの場はまだ軟弱であったけれど、やがて音もなく霜が忍び寄り、気がつけば厚い雪に覆われるだろうわけでまさに"今を楽しめよ"である。

コメント欄ただいま休眠状態です。受付を拒否してるワケじゃないのですがとにかく店主に届く事がなく、どこかブラックホールに吸い込まれてるらしい。でありますからコメントは gmuraoka@ms6.ncv.ne.jp にメール頂けましたら幸いです。
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