「見せたいもの」と「見たいもの」

 Tムラ君に誘われて木古内町に行ってきた。地域の魅力発信に関するサミット参加のためで、そこでは弘前市の「路地裏探偵団」団長と我らのTムラ君が講演されるのだ。「東京建築探偵団」赤瀬川原平さんの知遇を得る店主としては、東北や道南一帯に勢力拡大してるらしき遺伝子調査研究の好機なわけでもあり、勇んで出かけた次第。
 木古内町は人口5千人の小さな町だ。林業や農業が主産業で、寒中ミソギといういささか自虐的な神事でも知られている。そして、津軽海峡海底トンネル潜って延伸して来る北海道新幹線の、その最初の停車駅マチでもある。それを絶好機と捉えて町おこしに精を出すのは当然で、その現況を知りたくもあった。
 会議の内容には些かの違和感をもった。「まち歩き」がテーマなのだが、肝心のマチはと言えば、駅から500メーターも歩けば行き止まり、もろに津軽海峡と出くわす。怪しき物件を探り巡る歓びはなく、指示通りただ順番に観て歩くしかない。道路拡幅工事と整備が始まって、マチの記憶を蓄積した建物がバリバリ取り壊されていた。遺すに値しなかったとも言えるし、それ以上のものを作る自信があったのかもしれない。主体者は町民だから、よそ者が云々する筋じゃないが、しかし問われたから店主は答えた。かって木古内の渓流で起きたヒグマ事故に触れ「完全な野生と出会う事が出来て、戦い、無惨だが幸福に死ぬ事が出来る土地」をこそアッピールすべきではないかと提案したのだ。どこの駅前も人類の賢しらなエネルギーでいっぱいだ。誰もがうんざりしてる。木古内が誇るべきはそんな事じゃないだろう...、という訳だ。
 無念にも店主案は無視された。「そんな危ない場所に誰が行きたがるか」という論理だ。行政の役割は市民国民の安心安全追求だからやむを得ないとは思う。一瞬、TPPやオスプレイや原発が脳裏に浮かんだけれど、しかしここはそれを言い合う場ではない。押し黙り、懇親会を楽しんで再びJRに乗って帰ってきた。
 画像は今朝6時ころのご近所。
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