『壺中の天」展

 かって壺や甕には、命を再生する力があると信じられていました。
『壷中の天』とは、「壺の中に、仙人の住む別天地がある」という中国故事に由来することばです。

古代の人は時季にどっさり収穫したものを、壺や甕、桶や樽に入れて保存しました。
ある時それが腐らないばかりか、塩やカビの力で、全く別の食べ物に生まれ変わることに気づきます。

米は、芳醇な酒やまろやかな酢に、大豆や小麦は味噌,醤油。
アワビやイカの腸やウニは塩辛。鮒や鮎はなれずしに。
猛毒のフグの卵巣さえ安全な食べ物に姿を変えてしまいます。
まさしく壺や桶は、いのちを宿す神秘の器だったのです。

壺中に醸される食べ物は、千年余の歳月を超えて、今に生きています。
                                                                                                    睦田幸枝

 ギャラリー村岡は「第5回世界料理学会http://www.ryori-hakodate.net主催、大橋弘写真展"壷中の天"」を開催中(4月16日から24日まで)。先に紹介した文は睦田幸枝さんがその写真集に寄せたもので、今学会のテーマが「発酵」とあり、発酵食の作られる現場を長く訪ね歩き取材してきたお二人が馳せ参じてくださった次第。「サライ」や「専門料理」に日本の伝統食品を連載する睦田、大橋(すみません文字が違いますが...)さんコンビは、4月19日(日)の午後2時より、元町のヨハネ教会でスライドトークショーも行いますので、どうぞお見逃しないように。料理学会チケット提示で入場無料、それ以外の方は500円。料理学会チケットはギャラリーでも扱っています。
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